エターナル・フロンティア~前編~
「どうしたの?」
「ハートラ博士、遅いですね」
「ねえ、クリスのことそのように呼んでいるの?」
「いけないかな」
「クリスは、博士というタイプじゃないわ。だって、おかしいわよ。彼って、不真面目なのよ」
大笑いしながらクリスを貶していくが、タツキは他人を貶す権利はない。彼女の生活スタイルは、中年親父。料理や掃除は、他人任せ。そして、洗濯物は溜め込んでしまう。クリスが言うように「女性なら――」しかし馬耳東風のタツキに、何を言っても無駄であった。
「ハートラ博士の方が、立派――」
「何か言ったかしら?」
「何でもないよ」
「それならいいわ」
そのように言うが、絶対に聞こえている。それにタツキは地獄耳なので、悪口は小声であったとしても彼女の耳に届く。その証拠に、タツキの表情が悪い。これは、腹に怒りを溜めている顔だと長年の付き合いでわかる。しかし、それを指摘してはいけない。指摘すれば、手が飛んでくる。
「それにしても、遅いわ」
「多分、もう少しです」
「それならいいけど。もう、空腹よ」
「簡単な料理でいいのなら、作るけど」
「本当!?」
「嘘は、言わないよ」
「お願いするわ」
料理という単語に、間髪入れずに食い付く。相当空腹なのだろう、タツキの瞳が輝き出す。腹が空いたというのなら自分自身で作ればいいのだが、料理は面倒なので彼女は我慢してしまう。
ソラとタツキとクリス――三人の中で、人間らしい生活を送っているのはソラとクリス。本来、男がいい加減な生活スタイルになってしまう。この三人の場合、タツキが男の生活スタイルを取っていた。ソラとクリスは自ら食事を作り、掃除・洗濯も真面目に行っている。
クリスの部屋を見た人物は少ないが、ソラの部屋同様に綺麗という。それに噂では、床が光っているというのだから驚かされる。ソラとクリスは、性別を間違えて生まれてしまった。そのように思ってしまうほど二人は女らしい一面を持ち、彼等を夫としたら最高だろう。