エターナル・フロンティア~前編~

 家事全般をこなし料理は完璧。是非、一家に一名欲しい人物をタツキは二人も顎で使っている。傍から見れば、羨ましい。いや、嫉妬の対象というべきだが、タツキは気にしていない。

 「これは、当たり前」という素振りを見せて、彼等を使い続けている。それに対して二人は「仕方ない」と、諦めている。タツキに面と向かってそのことを指摘したら、逆鱗に触れてしまう。

「オムレツでいい?」

「それ、好きよ」

「焼き加減は、どうする?」

「半熟がいいわ」

 素人がオムレツを作った場合、大体が固焼きになってしまう。卵料理の火加減調整は、思った以上に難しい。その為タツキがオムレツを作ると固焼きを通り越して、焦がしてしまう。

 しかし料理が上手いソラは好みの硬さに調整してくれるので、タツキにとってそれが嬉しかった。親しい仲にも――という言葉が存在するが、タツキにそれを求めてはいけない。相手が親しい仲であればあるほど、馴れ馴れしい態度を取ることがある。つまり、今回の件がそうだ。

 その時、タツキの家の側に一台の車が急停車する。それはソラが待ち望んでいた人物クリスで、表情は微かに歪んでいた。ソラの予想通り渋滞に捕まってしまったらしく、やっとの思いでやって来たようだ。

「遅い!」

「そう言うか」

「約束の時間を過ぎているわ」

「あれは、予定時刻だ」

「それは、言い訳よ」

 人間、空腹が続くと腹が立つもの。タツキは両腰に手を当てると、クリスに向かって愚痴っていく。要は「早くご飯を食べたい」というものだろう、ソラとクリスは瞬時に察する。

 タツキの言動に肩を竦めると、クリスは後部座席から食材が詰められた袋を数個取り出すと器用に車の鍵を閉め建物の中へ入っていく。それを見たソラは、同じように建物の中へと向かう。その途中、タツキに話し掛けることはせず、二人は料理に付いて熱く語り合う。

 タツキは慌てて二人の後を追うが、調理の手伝いは行えない。逆に、邪魔になってしまう。ソラとクリスの腕前は天才的なので、其処に入る隙間はない。ただ、料理の仕上がるのを待っているしかなかった。勿論、口出しは不要。テキパキと動く二人を、眺めるしかできない。
< 252 / 580 >

この作品をシェア

pagetop