エターナル・フロンティア~前編~
今、タツキが唯一できることは調理姿を静かに見守るしかできない。無言のままソファーに腰掛け、時間を潰していく。しかし無言を貫くのは思った以上に辛いもので、何よりタツキは無類のお喋り。一方ソラとクリスは、長時間無言を突き通しても平気な性格であった。
タツキは十分でギブアップすると、二人に話し掛けていた。だが、二人からの返答はなく、調理に集中しているのかタツキの声は耳に入っていなかった。それどころか、二人の会話は弾んでいた。料理が作れる同士、話のネタは尽きないようで、互いが持つ技術を盗み合う。
「ねえ、聞いている」
「何?」
「お前は、静かに座っていろ」
「だって、暇なのよ」
「料理は、作れないだろ」
その一言は、タツキの身体に突き刺さっていく。作れない者がどのように足掻いたところで、作ることはできない。新鮮な食材は無駄になってしまい、後片付けが面倒になってしまう。この場合、手助けはいらない。それどころか、静かに待っていてくれた方が有難い。
「そ、そうだけど……」
「タツキは、これを食べていてほしいな」
「あら、美味しそう」
ソラが差し出したのは、先程約束していた「オムレツ」であった。それを受け取ったタツキは、構ってくれないことに不機嫌な表情を浮かべていたが、オムレツは食べることに集中する。その間は無言で食べ続け、このオムレツは相当美味しかったのか表情が緩んでいく。
「どんどん、料理を作りましょう。どうやら、何かを食べていると静かにしているようですから」
「そうかもしれないな」
「次は、何を作りますか?」
「やはり、肉料理だ」
「ああ、そうでした」
「俺は、肉を焼く」
「でしたら、ソースを作ります」
互いの役割を決めると、それぞれの分担に別れていく。肉を焼くといったクリスは、丁寧に脂身を処理していく。中には「脂身が美味い」という人物もいたりするが、クリスを含めソラも脂身は嫌い。タツキの好みは不明であったが、脂身の処理は勝手に行われていく。