エターナル・フロンティア~前編~

 タツキの位置では、脂身の処理は死角になってしまう。これにより、何をしているのかわからない。何より脂身の大量摂取は、健康に悪い。それ以前に、タツキの生活は不摂生すぎた。このままでは、早死にの対象者になってしまう。それにタツキはソラの恩人なので、早い葬式は迷惑。

 無論、クリスも同意見。元同僚の葬式は悲しいが、その前にタツキの葬式では……涙が流れるかどうか、ハッキリいってわからない。何せ、毒吐き関係。葬式の時も、毒を吐いてしまうだろう。その時、ソラとクリスが同時に溜息をついた。それも、数秒の狂いもなく――

「どうしました?」

「ソラは、どうした?」

「タツキのことです」

「俺も、タツキのことを考えていた」

「あら、嬉しいわ」

 オムレツを食べているので静かにしていると思っていたタツキであったが、どうやら聞き耳を立てていたらしい。それに、オムレツは食べ終わっている。大食漢と同時に早食いは、健康に悪い。

「お前の悪口だ」

「偶然ですね」

「おっ! そうなのか」

「タツキの性格は、悪いですから」

「ああ、そうか」

 ソラとクリスは同時に振り返ると、タツキの顔を見詰める。そして、口許を緩めた。それは決して、相手を馬鹿にしているのではない。要はタツキをからかって楽しんでいるらしく、それにタツキの反応が面白い。だから日頃のお返しとばかりに、二人は毒を吐き続ける。

「な、何よ!」

「正直に感想を言っただけ」

「もう、最低!」

 刹那、金属の何かが光を反射する。それは、オムレツを食べるのに使用していたフォーク。そして何を思ったのか、クリスに向けて投げ付けた。無論、狙い定めて投げたのではない。フォークは正確に、クリスに向かって飛ぶ。そして、胸元に突き刺さる寸前――金属音が響き渡った。

 自分のことを助けてくれるクリスは、早死にして欲しくない。その思いが、ソラの身体を動かす。フォークを叩き落したのは金属製のボールであったが、その中には作り途中の大事なソースが入っていた。結果、床とクリスが来ていたシャツがソースによって汚れてしまう。
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