エターナル・フロンティア~前編~
今日のクリスの服装というのは白いシャツで。それも運が悪くシャツは一昨日に購入した物だ。
命は、助かった。
その直後、項垂れてしまう。
しかし、これで済む問題ではない。クリスは反射的に顔を上げると、タツキを睨み付けた。
「タ、タツキ!」
「な、何かしら」
「お前が、悪い!」
「アタシ? ソラ君が、悪いのよ」
「オレは、違うよ」
その瞬間、三人の間で口論が開始した。根本的な原因はタツキに存在している。そもそもタツキの行いは悪行といっていいもので、相手が嫌いだからといってこれを相手に投げていい物ではない。
ソラが寸前でフォークを弾かなければ、クリスは死んでいた。そして、殺人者で刑務所行きになってしまう。タツキの性格を考えれば刑務所生活をした方がよく、この自己中心的な性格が治るかもしれない。今回の事件は、全面的にタツキが悪い。それをソラに押し付けるとは――
「いい加減、認める」
「どうして」
「これは、駄目だ」
「そうですね。諦めましょう。それとハートラ博士、シャツを脱いで下さい。染みを抜きます」
「できるのか?」
「はい。昔、色々と――」
その話に、ソラの過去が大きく関係している。クリスは瞬時にそのように判断すると、特に詳しくは尋ねることはしない。相手の口が開かない限り、質問はしてはいけないからだ。それにソラの過去は複雑で悲惨そのもので、クリスは大まかな事情は知っている。だから、質問はしない。
「それなら、頼む」
「わかりました。タツキ、風呂場を借りるよ」
「それなら、アタシのも――」
だが、それが受け入れられることはない。今回のソラの仕事はクリスのシャツのシミ抜きで、タツキの服までシミ抜きをする必要はない。それにタツキはクリスに対しての殺人未遂を行っているので、彼女の頼みごとを聞き入れたくない――というのが、本音であった。