エターナル・フロンティア~前編~
美味しい料理を作る。その当初の目的はタツキの殺人行動によって、おかしな方向へ向かった。その後、クリスは上半身インナー姿で食事を作り、ソラは風呂場で染み抜き。そして、タツキは――
ただ、ソファーの上で時間を潰す。
そして、いつもの様に時間が過ぎていく。
一時間後――
三人は、同じテーブルに着く。目の前に並べられている料理の数々は、クリスお手製の料理。本来、ソラの料理も同じテーブルに並べられる予定であったが、今回は掃除と洗濯係り。それにより三人はクリスの手料理を味わうが、特に文句はない。それだけ、美味しい料理だった。
「……悔しいけど、美味しい」
「何だ、その言い方」
「美味しいですよ」
「ソラは、正直だ」
「嘘を言っていいのよ」
二人の毒吐きは、相変わらずのもの。それは一種のコミュニケーションとわかっているが、美味しい食事の前では不要。ソラはそれを小声で指摘すると、肉にナイフを入れていく。
この肉料理に、幾らの値段が――
ふと、ソラは頭の中で値段を弾き出す。これだけの料理、安い値段は勿体無い。三ツ星とまではいかないが、素人でこれだけ作れるのは珍しい。現在、料理を趣味としている者は少ない。
この時代、料理は簡単に済ますことが可能だ。レストランのメニューも充実しており、何よりコンビニも発達し品揃えもいい。それに自動調理器も売られているので、これらを用いれば普通に生活を送ることができる。だから、態々労力を掛けて料理を作る者は珍しい。
その中で、ソラとクリスは異質な存在といっていい。確かに自動料理も美味しいことは美味しいが、味付けが一定で味気ないものであった。だから二人は料理を極めようと努力し続け、何より新しい料理を開発していくのは面白く、一度嵌ってしまうとなかなか止められない。
特にクリスは、料理に凝っている。それを証明するのが、出張で訪れた場所で香辛料を探しているという。クリス曰く「料理は、調味料で左右する」らしく、自宅には大量の香辛料が置かれている棚があるらしい。それに調理器具も多く揃え、本当に生まれ付きの主夫だ。