エターナル・フロンティア~前編~

 クリスの料理の腕前は、想像以上に高い。これなら科学者廃業後、料理人として第二の人生を送っていける。科学力が発達した現代であっても食に時間と掛けるという行為は捨てきることはできず、腕前の高い料理人は就職先に困らない。特に金持ちが、挙って雇っている。

 しかし今のところ、科学者を辞める気はないという。何より給料が破格で、それ以上にソラの身が心配だ。その両方が合わさり、クリスは科学者を続けていた。また、タツキに情報を手渡す役割を持つ。あの世界は濃い闇が漂っているので、全てを知るのは不可能に近い。

 だが、このままではいけない。

 よって、タツキとクリスが動く。

 しかし、今はその話を持ち出してはいけない。三人は、雰囲気でそれを察していた。空気を読んだソラは、料理に付いての話を切り出す。それは美味しい料理の作り方で、ソラとクリスはタツキを他所に盛り上がっていく。一方、話し掛けてくれないタツキは暇で仕方が無い。

 それなら一緒に話に加わればいいのだが、タツキは料理に興味を持つことはない。その為、何を喋っているのか理解できないでいた。語られる単語は、専門用語。最早、未知との言葉に等しい。

「後で、レシピが知りたいです」

「おっ! いいぞ。これは、簡単だ」

「何処が、簡単なのよ」

「普段、料理を作らないお前が言うな。肉を丁寧に焼いて、ソースを作る。それだけの作業だぞ」

「面倒」

「……そう言うか」

 途中で会話に割り込んできたと思ったら、料理の愚痴。気分がいい会話を続けていた二人にとって不快そのもので、互いに溜息を付くとこれについての話を途中で止めてしまった。

「無視しないで」

「料理をしない奴は、入ってくるな」

「差別」

「それなら、料理を作るか?」

「そ、それは……」

 料理にトラウマを持っているのか、タツキは拒絶反応を見せる。何故、其処まで料理を嫌うのか。ソラとクリスは、全く理解できない。そもそも料理は楽しく、多くの食材から様々な料理を作り出すことができるからだ。それが関係してか、ソラとクリスは時間を見付けては料理を作っている。
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