エターナル・フロンティア~前編~

 クリス曰く「一日、料理をしていても楽しい」という。そしてソラも、彼と同意見を持っている。天才的な料理の腕前を持つ二人に囲まれて生活しているタツキは、実に幸せといっていい。

 独身で、尚且つ異性。その二人が甲斐甲斐しく、無料で家事全般を行ってくれる。独身女性が聞いたら嫉妬の嵐になってしまうが、タツキはこれが普通だと思っている。二人が勝手にやっていることなのだが、タツキは二人の本心を知らない。葬式に参加したくないから、やっているのだと――

「お代わり」

「は、早い」

「タツキは、大食いだよ」

「そうだった」

 喋りながらの食事であったが、タツキの皿の上に盛られていた肉が胃袋に納まってしまう。一方、ソラとクリスの皿には半分以上の肉が残っている。食欲の面だけを取っても、これほど逞しい女性は珍しい。

「今回は、オレが作ります」

「おっ! それは、有難い」

「挽き肉を買いましたので、ハンバーグを作ります。上に目玉焼きを乗せると、美味しいですよ」

「それ、食べるわ」

「お、お前……」

 底無しとも呼べる胃袋に、ソラとクリスは言葉を失う。オムレツとステーキを食べて、更にハンバーグを食べたいという。一時期、有名であった「大食い選手権」という大会に、出場できるかもしれない。同時に優勝してしまったら、完全に見る目が変わってしまうだろう。

「タツキの料理だけ、多くしないと」

「そんなことしなくていい」

「何よ」

「喧嘩しない」

 流石、人間の本能というべきか。美味しい食べ物を目の前に、タツキの感覚は崩壊しつつあった。もっと料理を食べたい――その感情が彼女を突き動かしているのか、早く次の料理を作って欲しいとソラにせかしだす。また大きいハンバーグがいいと、子供っぽい言い方をする。

 しかし、作り手としてみれば「美味しい」と言って、綺麗に食べてくれることは嬉しい。クリスは「大食い」タツキを茶化しているが、内心は喜んでいた。だが、相手はタツキなので、正直に気持ちを表現するのは恥ずかしい。それにより、毒吐きに変化し相手にぶつけてしまう。
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