エターナル・フロンティア~前編~

 本音は相手を褒めたいのだが、互いの関係はこのようなもの。毒吐きを繰り返すタツキとクリスに、ソラは苦笑するしかできない。喧嘩するほど仲がいいというが、この言葉は二人の為に存在するらしく、実に楽しい二人。これで結婚をしないのだから、何かが間違っている。

 その時、ソラは疑問に思う。今までそれほど気にならなかったが、タツキとクリスはどのように出会ったのか。同じ職場に勤めていたということは知っているが、それ以上は聞いていない。

 何より二人は同性同士ではなく、異性同士。本気で嫌っているのなら、相手にしないもの。

 だが――

「ひとつ聞いていい?」

「何かしら」

「タツキ達は、就職前からの知り合い?」

「いや、就職後に出会った。それが、どうした? 急に、質問する内容とは思えないけどな」

「それは……ただ……仲がいい関係だから、結婚をしないのかな……そう、思っただけだよ」

 ソラの言葉に、タツキとクリスは固まってしまう。だが次の瞬間、タツキが大笑いをする。一方クリスは、居心地が悪い表情を浮かべていた。一瞬にして変化した、互いの立ち振る舞い。いまいち理解できないソラは何か悪い質問をしてしまったのかと、恐る恐る尋ねた。

「それは、違うわ」

「なら……」

「以前、クリスも同じ質問をしたのよ」

「その時、タツキの返事は?」

「笑ってやったわ」

「それ、酷くないかな」

「そうかしら? おかしな質問をしたから、笑ってやっただけよ。アタシに結婚? 信じられないわ」

 それはタツキの得意技といっていいもので、相手が誰であったとしても非情な一撃で片付けてしまう。男を圧倒する女。この瞬間、改めて認識する。タツキを敵に回してはいけない――と。

 やはり、性別を間違えて生まれてきた。大食いで、簡単に手を上げる。尚且つ、口が悪い。本当は、男か……数年前に性転換手術を受けて、今のタツキに変わってしまった。悪いとわかっていたが、ついつい想像してしまう。ソラが今まで出会ってきた女性の中で、タツキは別格。
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