エターナル・フロンティア~前編~
強く逞しく――
どのような障害も簡単に乗り越えてしまい、普通に生きていくことができる。それにクリスの質問を軽くあしらったということは、今のところは結婚しないのだろう。ソラはタツキから視線を外すと、今度はクリスに向ける。一方クリスも、同じようにソラに視線を向けた。
そして瞬時に互いの気持ちを察したのか、肩を竦めて見せる。同性同士、言葉は不要だった。
「……手伝う」
「いいのですか?」
「タツキと喋っているより、料理をしている方がいい。それに挽肉は、粘りを出した方が美味い」
「それでは、お願いします」
「あと、話していると喧嘩しそうだ」
「それは見ていてわかります」
しかし、愚痴はこれで終わったわけではない。これから先は、タツキを抜かした男同士の会話がはじまる。ソラはクリスの結婚観も知りたく、できるものなら参考にしたいと考えていた。
だから、邪魔してくるタツキは無視しなければいけない。勿論そのことで反論の声が上がったが、二回目ということでソラとクリスは聞き入れようとしない。それにプライベートの会話が混じるので、タツキに聞かれたら尾鰭が付きとんでもない内容に変化してしまう。
日頃から世話になっている相手だが、ソラは個人的な内容は聞いてほしくはない。この場合、クリスの方が安心できる。口は堅く、相談しやすい。それに、他人の不幸で遊んだりしない。また相談をすれば適切な意見を言ってくれ、相談に関してはタツキより何倍もいい。
「で、先程の話だけど……」
「す、すみません」
「何故、謝る」
「タツキに、一撃で倒されていたとは……」
「あれが、あいつの性格だ」
「慣れているのですね」
「慣れないとやっていけない」
その言葉に続き、クリスは挽肉が入ったボールの中に胡椒を入れていく。それに続いて、塩を一摘み。料理は、処理と下味が重要。そう語るクリスは、力いっぱい挽肉を捏ねていった。料理をしている時は嫌なことを忘れることができるのだろう、クリスの表情爽やかだった。