エターナル・フロンティア~前編~
年齢相応にお洒落に興味を持っているが、いかんせんやり方がわからない。仕方なくイリアはインターネットを使って流行の化粧の仕方を検索し、それを参考にしながら化粧を行なう。
テーブルの上に置かれているのは、数多くの化粧道具。これらは最近購入した物ばかりなので、新品そのもの。ユアンに不快感を抱かしてはいけないと急いで取り寄せたので、会社はバラバラ。しかしイリアは「使用できればいい」と思い、顔にペタペタと塗っていく。
やはり、尊敬している相手にはいい印象を抱いてほしい。その感情が前面に出ているらしく、イリアを突き動かす。化粧水にクリーム、ファンデーションにチークなど懸命に頑張るが、化粧経験が少ないイリア。そのやり方は適当そのもので、ヘレンが見たら驚くだろう。
だが、今回は運が良かったらしく思った以上に仕上がりは良好。次に丁寧に髪を梳かすと、これで終了である。今日ユアンと会うことはファンクラブの面々は知らないので安心して過ごすことができるが、一体何処へ連れて行くのか――あれこれと想像し、緊張してしまう。
「平気かしら」
おかしい部分がないかと、鏡の前で念入りにチェックを行う。今回はデートではないが、無意識に気合が入ってしまう。それだけユアンという人物は魅力的で、ファンクラブが結成されるのも納得できる。
憧れの人物に、綺麗に見られたい。
注目してもらいたい。
同時に、学力面も認めてもらいたい。
その気持ちが、前面に出る。
準備が整った後、イリアは一階へと向かう。荷物はバックのみで、それ以外は持ってはいかない。何より今日は研究所に行く日ではなく、またこのような日は研究を忘れていたい。
本格的に働くようになったら、忙しい日々を送る。
だから、今を楽しみたい。
それがイリアの本音だった。
「いってきます」
「帰宅は、何時かしら?」
「他の人達の予定もあるから……」
ヘレンの言葉に、イリアは困ってしまう。就職したからには周囲の付き合いも必然的に増えていくので、門限通りに帰宅できるかはわからない。それに仕事が忙しくなれば、帰宅は不規則。それに明確に「何時に帰宅する」というのは無理な相談で、イリアはいい表情をしない。