エターナル・フロンティア~前編~
いや、それを「女性」という枠で、括っていいものではない。ユアンのファンクラブの会員が、特殊といっていい。一種の新興宗教。会員の面々は、特殊な一面を有している。洗脳――それに等しい。
ユアンは、特別だ。
彼は、科学者として優秀。
将来の目標。
そして、彼に一目置かれたい。
勿論、共に同じ研究を――
最終的には、名を残す科学者になりたい。それはイリアの目標なのだが、会員の者達は勝手に夢を語っていく。だが、それを否定し馬鹿にする者はいない。イリア以外は皆、一緒だから。
「また、食事に行こうか」
「いいのですか?」
「僕は、構わない」
「で、でしたら……」
「ランフォード君との食事は、実に楽しい。それに、頼み易いという部分があったりするからね」
「そ、そうですか!」
ユアンに、そのように見られていたとは――イリアは、何も言えなくなってしまう。これはアカデミーの卒業と就職先が決まった時より、嬉しい内容だ。女として生きているのだから、一度はそのようなことを言われてみたい。そして理想の相手と一緒になり、女の幸せを満喫したいと思っている。
それでもイリアの恋愛、難しいことが多い。原因のひとつは、両親が口煩く何かと注文を付けて来る。そして、もうひとつは……これこそ最大級の悩みであったが、心の奥底に仕舞う。
「以前は、安い料理だった。今度は、レストランに行こう。ランフォード君は、コース料理は好きかな」
「その前に、はじめてです」
「そうか。それなら、一緒に行こう」
「嬉しいです」
「それなら、良い店に行かないと」
「楽しみにしています」
流石、過去に何人の異性と食事をしたことがあるユアン。短い会話の中で、簡単にイリアを丸め込んでしまう。勿論、悪いやり方ではない。イリアが世間を知らなすぎるといっていいが、裏側に私怨が隠されているのではない。本音でユアンは、イリアを誘おうとしていた。