エターナル・フロンティア~前編~
それだけ、彼女に信頼を置いていた。
「その……嫌いな人って、いるのでしょうか」
「馬鹿は、嫌だ」
「馬鹿?」
「そう、馬鹿だ。それは、知識面ではない」
「他は、何でしょうか」
「そうだね……特に、好き嫌いというものはない。先程言ったように、馬鹿が嫌いで苦手だ」
「そうですか」
イリアは同調するかのように、何度も頷いていた。しかし、イリアが考える馬鹿とユアンが考えている馬鹿の本質は大きく異なっていたが、彼女はそのことに全く気付いていない。
気付いていないからこそ、ユアンも自身と同じような意見を持っていると、イリアは心から喜んだ。この事柄から、問題定義に発展してしまうということは有り得ない。それは相手がユアンという心優しい人物ということと、今それを突っ込む理由が存在していないからだ。
だが、簡単に片付けられる問題ではない。イリアは科学者の道に進むのだが、今では――
イリアは、物事を多方面で観察していくだけの視野を有していない。それが、致命的な欠点だ。現にイリアは「馬鹿は嫌い」と、に同調している。彼女は、典型的な知識先行型だった。
無論、一目でイリアの本質を見抜いてしまう。流石、若くして高い地位に就いているだけあった。ユアンの出会ってきた人物の中でイリアは、小物だ。いや、それ以下の人物に等しい。
彼女の人生経験は、砂糖菓子のように甘い。それを聞いた彼女は激辛と表現するだろうが、ユアンはそれを否定していくだろう。本当に激辛の人生は、言葉に表現することが難しい。
「ラドック博士も、そうなのですか?」
「そうだね……部下は、仕事ができる方がいい。僕達の仕事は、忙しいことが多い。溜めたら、地獄だ」
「私も、そうなるのですね」
「最初は、別の意味で忙しい」
その言葉に、イリアはハッとなってしまう。そう、新人がはじめにしないといけない仕事は雑用だ。無論、男女は関係ない。何事も、男女平等。全員が、同じように苦労していく。其処に「女性だから」という言葉は不要。現に科学者の世界は、努力と結果が物を言う。