エターナル・フロンティア~前編~
女は、何故――
いまいち、理解できない。
それに、ユアンが好きになる女性は単純明快。内面が美しく、料理が上手い。それに、家事ができれば完璧だという。外見は二の次で、化粧が厚い女性は嫌い。何より、臭くて暑苦しい。それに、化粧を落とした後が別人ということもザラではない。そう、化粧は女性を偽る。
どうして、外見ばかり弄くる。
ユアンの本音は、このようなもの。
それなら、イリアは――
ユアンは、助手席に座っているイリアを一瞥する。彼女は、今日の為に気合を入れて化粧をしていた。今まで出会ってきた人物の中では落ち着きを保っているが、今日の彼女は違う。
(あの頃より……)
ふと、過去の出来事を思い出す。
イリアとの出会いは、今から三年前。ユアンがいつものように、アカデミーに用事があって行った時だ。運命の出会いというのは大げさな言い方であったが、それだけ深い「何か」が、其処に存在していた。
無論、イリアは気付いていない。それはユアン側に関係している出来事であって、イリアには関係ないといっていい。しかし、混じり合った運命は確実に互いに影響を及ぼしていた。
そう、このように一緒の車に乗っている。
これこそ、運命の賜物だ。
実に、運命は面白い。
それにより、その運命に口許を緩める。
(しかし……そう……)
だが、心の底から喜ぶことはできないでいた。それは、蟠りか。それとも、別の物か。ユアンは、溜息を漏らす。
「どうしましたか?」
「いや、別に――」
「心配です」
「平気だ」
「仕事が、忙しいのですか?」
相手が憧れの人物ということで、本人が「平気」と言っても、簡単に受け入れることはしない。それどころか過度に心配してしまい、本当に大丈夫か聞いていく。勿論悪気はなかったが、ユアンは内心「いい加減にしてほしい」という気持ちが、無いわけではなかった。