エターナル・フロンティア~前編~
勿論、イリアはそれを信じようとはしない。ユアンの何処か、弱いというのか。年齢に関係なく多くの部下を束ね、研究では名が残る功績を出している。そして科学者の中には、彼を目標としている人物は何人もいる。その人物が、弱い――イリアは、ユアンの言葉を否定する。
「過大評価だ」
「いえ、ラドック博士は――」
「いや、違う」
イリアは、世の中のどす黒い部分を理解していない。していないからこそ、物事の表面しか見ていなかった。ユアンが言う「弱い」という言葉は、実力を示しているのではない。それは、精神面と己の立場。その他、多くが混じり合い「弱い」と、ユアンは言っていたのだ。
しかし――
このようなものかと、ユアンは勝手に納得してしまう。イリアは、アカデミーの学生。真面目に講義を受け、真面目に研究に励んできた。それだけで、人生の勉強ができるわけがない。無論それはイリアだけではなく、アカデミーの生徒ファンクラブの会員も同じだった。
純粋。
そう、イリアは純粋だ。
同時に、脆い一面も兼ね備えている。現にイリアは、自身が望んでいることをそのまま遂行しようとしていた。だが、これからはそれではいけない。特に、研究所で働くようになってからは――
それを指摘してもいい。
だが、それは今ではない。
今、それを指摘した所でイリアは受け入れることはない。研究所で働き、苦労をする。それにより、ユアンの言葉の本質を知ることになる。カイトスとしての、真の生き方を――
「そうだ。先程の話の続きをしていいかな」
「先程?」
「徹夜と肌の話だ」
「あ、あれは……」
「アカデミーの時と、今のランフォード君と違う。何か、心境の変化があったのかと思って」
アカデミーに在学時、イリアはファッションに興味は持っていたが、化粧は殆んどしてはいなかった。研究に情熱を注いでいたのが主な理由で、このように綺麗に整えるようになったのは、アカデミーの卒業が正式に決まり、尚且つユアンと一緒に何処かへ行くと決まったからだ。