エターナル・フロンティア~前編~
そして、就職も大きく関係していた。何より憧れのユアンが勤めている研究所で働くというのは、数多くの人間に見られる確率が高まるということ。その為、イリアは徐々に女性らしい生き方をしていく。それと同時に、恋愛感情が高まっていった。いつか――その思いは、今も続く。
「おかしいですか?」
「いや、特には」
「頑張りました」
「化粧は、頑張るものなのかな」
「ネットで調べますと、二時間化粧に時間を掛けるという人物もいるらしいです。流石に、私は……」
それを聞いたユアンは、唖然となってしまう。化粧に二時間――彼にしてみれば、馬鹿馬鹿しいことだった。出発の時刻が朝の7時と予定していた場合、起床は五時というところか。いや、化粧で全てが終了するわけではなく、着替え身嗜みを整えそして朝食を取らないといけない。
これは、一種の執念。言い方を悪くすれば精神面の病気で、異性の心情をやはり理解し難い。ユアンは苦笑いを浮かべると、研究所で働いている女性の科学者のことを思い出していく。
そして、溜息をついた。
「ラドック博士?」
「気にしなくていい」
「で、ですが……」
「それより、もう少しで到着する」
「あの……其処は?」
「まだ、内緒だ」
なかなか目的地について話してくれないユアンに、イリアは不安を抱く。勿論、ユアンを信頼している。
しているが、悪い方向へ思考が働く。
それにより、顔色が変化していった。
「どうした」
「い、いえ……」
「それなら、辛抱だ」
「は、はい」
此処で、無理に聞き出してもいい。しかしユアンにこれ以上の心配を掛けるわけにはいかないので、口をつむぐ。ユアンが気分を害してしまったらこの先、気まずい雰囲気になってしまうからだ。それにユアンとの確約を破綻させるわけにはいかないので、静かに待つ。