エターナル・フロンティア~前編~

 その後、イリアとユアンの間に長い沈黙が走る。ユアンは、イリアが話し掛けてきたのなら喋っていた。一方イリアは、口を開こうとはしない。どのような言葉を言っていいのか、わからないのだ。

 それにより、車内は静寂が包まれた。

 そして、目的地へ到着する。


◇◆◇◆◇◆


 目的の場所――それは、二階建てのこじんまりとした家の前であった。建築年数は、集十年というところか。壁の至る個所が汚れ、蔦が絡まっている部分が目に止まった。それにこの一体は、海辺の街と表現するべきか。下車したと同時に、潮の香りが優しく鼻腔を擽る。

 この一帯はイリアが暮らしている住宅街とは、明らかに雰囲気が異なっている。どちらかといえば、文明発達が遅れている地方の街並みに似ていた。しかし、イリアは正確な情報を持っていない。テレビや雑誌・インターネットで見た光景をそのまま当て嵌め、意見を言う。

 それにより、時として的外れの意見を述べてしまう。それは、仕方が無い。高い文明と科学力を持っている場所に、暮らしているのだから。イリアの正直な意見に、ユアンは苦笑してしまう。

「古い?」

「す、すみません」

「確かに、古いね」

「その……このような場所は、滅多に見たことがなかったので。決して、悪い意味ではないです」

「確かに、この惑星(ほし)の文明は高い」

「で、ですから……」

 懸命に言い訳をしているイリアは、現代っ子。今の文明にどっぷりと浸ってしまうと、このようになってしまうのだろう。固定概念が生み出した偏見の一種。ユアンは、それを否定することはしない。研究所を含めアカデミーの生徒の中にも、このような人物が存在している。

 自分達の文明が、一番。

 それ以外は――

 人間は、目下の存在を無意識に生み出す。イリアは相手がユアンであったとしても、それを平然と行ってしまう。確かに古臭い一帯であるが、ユアンは生活面で不便を感じてはいない。寧ろ、静かで暮らしやすい。何より、二階の窓から美しい海の光景を見ることができる。
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