エターナル・フロンティア~前編~
それを気に入ったユアンは、この家を購入したという。するとそれを聞いていたイリアは、反射的に質問を投げ掛けていた。この年齢で家を購入していることは、正直信じられなかった。
ユアンと同等の地位に就けば、若くして家を手に入れることができる。しかし、ユアンと同等という部分に問題があった。イリアは見習いの科学者なので、それに生来の天才ではない。生まれた瞬間から、差が生じているとは。イリアはユアンの家を見つつ、溜息をついた。
「凄いです」
「そうかな。個人的な理由で、購入している。それに、滅多に帰っていない。仕事が忙しいと、研究所に泊まっている。だからこの家は、殆ど利用していない。実に勿体ないことだね」
「では、ご両親は……」
「一人暮らしだ」
「えっ! それでしたら……」
「そう、個人用の家だ」
それを聞いたイリアは、目を丸くしてしまう。そして悲鳴に似た叫び声を発し、この一帯で暮らしている者達を驚かせた。突如響き渡った、絹を切り裂いたような声音。勿論、多くの者達が建物の中から飛び出してきた。そして、何が起こったのか口々に尋ねていった。
自身の影響で多くの人物が集まってきてしまったことに、イリアは俯き赤面してしまう。見兼ねたユアンは代わりに説明していくが、なかなか信用してくれない。それだけ、悲鳴にインパクトがありすぎたのだ。それにより全員が信用してくれたのは、この後十分も掛かった。
「私、何ということを――」
「日頃の研究より大変だったが、これくらいは慣れている。煩く言ってくる者達よりは、いいものだ」
「私はラドック博士に、必要以上に迷惑を掛けていますね。このようなことで、お手伝いを……」
「大事に、発展はしなかった。だから、気にしなくていい。それより、中に入ろう。立ち話は辛い」
「はい!」
「さあ、中へ」
ユアンの案内で、イリアは建物の中へ入っていく。外観は古めかしい印象を持っていたが、中の雰囲気は異なっていた。落ち着いた色彩で統一されている家具。それにこれはユアンの趣味なのか、花や絵画が飾られている。また綺麗に掃除された床は、陽光を反射し眩しい。