エターナル・フロンティア~前編~
「どうした?」
「その……綺麗な部屋ですね」
「滅多に、使用していないからだ」
「それでも、汚くなってしまいます」
掃除を専門に行う職業――その者達が隅々まで綺麗に掃除したような部屋を見てしまうと、褒め言葉しか口にすることができない。それにユアン曰く「時々、自分で掃除している」らしい。それを聞いた瞬間、イリアは更に驚く。そして何でもこなしてしまうユアンに、溜息をついた。
「凄いです」
「どうした?」
「私の部屋、ちょっと汚いのです」
「毎日使えば、汚くなってしまう」
「ですが、ラドック博士の自宅は綺麗です。その……何でもできる方って、やっぱり凄いです」
それは、イリアの本心の感想だった。女性の部屋以上に綺麗な部屋を見て、このように思わないわけがない。それにこれは全て、ユアン一人で掃除しているのだから驚きであった。
「……褒めすぎだ」
「いえ、本当です」
「それなら、掃除のコツを教えればいいかな」
「はい。宜しくお願いします」
ユアンの言葉に、イリアは嬉しそうに微笑む。それと同時に、女の子らしい一面を磨ければいいと思っていた。現在のイリアは、どちらかといえば女の子からかけ離れている。よって、少しでも成長できたらいいと思っていた。そうすれば、喜んでくれる人物がいるからだ。
イリアの態度に、ユアンは口許を緩める。彼自身、イリアが使っている部屋の汚さは知らない。だがそのように言うのだから、それなりに汚いというのは間違いない。そのことに肩を竦めると、やれやれという表情を見せる。そしてユアンは、イリアをダイニングへと案内した。
「飲み物は、何がいい?」
「お任せします」
「では、コーヒーを淹れるよ」
その言葉に続き、ユアンは暫くイリアの顔を見詰めた。一方イリアは真剣な視線を向けているユアンに驚き、赤面してしまう。そして俯き、身体を硬直させていた。すると自身が想像していた反応とは違うことにユアンはクスクスと笑ってしまい、イリアは実に初といっていい。