エターナル・フロンティア~前編~
「持って来れば、いいのですね」
「そう、頼む」
「場所は、何処ですか?」
「キッチンに、リボンが巻かれた箱が置いてある。その中に、入っているから持ってきてほしい。すぐに、わかる」
「はい。わかりました」
ユアンからの言葉を受け取ると、意気揚々とキッチンへ向かう。そしてマグカップを流しに置くと、目的の箱を探す。それは簡単に発見できたが、ユアンが言っていた通りに目に付く場所に置かれていた。イリアは箱を手に取ると徐にリボンを解いていくと、中身を見た。
(美味しそう)
箱を開けた瞬間、綺麗に模られたクッキーが入っていた。丸に四角に星型、それに三角の型。これを作った人物は相当マメな人物なのだろう、丁寧に作ったことが一目で判明できた。そして何を思ったのか、イリアはクッキーを摘み食いしてしまう。それも、複数を――
「ランフォード君」
「えっ! は、はい」
「何か、あったのか?」
「い、いえ……」
イリアは慌ててクッキーが入った箱を後ろに隠すと、愛想笑いを浮かべた。その不可解な態度にユアンは首を傾げると、別の物を取りに来たことを告げる。摘み食いに、気付かれていない。そのことにホッと胸を撫で下ろすイリアであったが、二人の間におかしな緊張感が走る。
「インスタントのコーヒーは、それになる。そして、ポットはそれを使うといい。で、やり方は……」
「それは、わかります」
「そうか。後は、頼む」
「はい」
「で、隠している物を貰っていく」
「気付いて……」
「それを言ってほしいかな」
「い、いえ」
ユアンの言葉に、イリアはピクっと身体を震わす。やはり、気付かれていた。流石ユアンというべきか、実に侮れない。イリアは身を縮めると、クッキーが入った箱を手渡す。そして恐ず恐ずとコーヒーを淹れる準備をはじめたが、イリアの不幸はこれで終わったわけではない。