エターナル・フロンティア~前編~
ユアンは箱を開くと、中身の個数を数えていく。無論、摘み食いをしているので個数は足りない。それに気付いたユアンは、目の前でコーヒーを淹れている準備をしているイリアに、厳しい視線を向けた。
だが、言葉を投げ掛けることはしない。それどころか、精神的ショックを与えていく。それは、溜息をついたのだ。無論、これは態とやっていることだが、イリアは気付いていない。その為、イリアの顔色は徐々に悪くなっていく。そして「しまった」と、思いはじめた。
「ご、御免なさい」
「何が?」
「その……クッキーを……」
「……そうだね」
とうとう、イリアは素直に白状した。無論、白状は早ければ早い方がいい。しかしイリアの場合、言うことが大前提。何故なら、ユアンが問い質さなければ永遠に隠していたからだ。
憧れの人物に、自身の嫌な一面を見せたくはない。というのが主な理由だと考えられるが、ユアンはそのような人物を嫌っている。表面上を取り繕った所で、本質は外に出てしまうもの。その時の印象が悪い場合、信頼を無くしてしまう。そう、人間関係は信頼で成り立っている。
「美味かった?」
「お、美味しかったです」
「菓子作りが上手い人物が作った物だから、美味いのは当たり前だ。所で、ランフォード君はどうなのかな?」
「お菓子作りですか?」
「そうだ」
「一応……作れます」
そのように言うが、イリアは料理は苦手だった。幼馴染のソラの方が腕前が高く、簡単な料理も場合よっては最低の料理に仕上がってしまう。特に、玉子焼きは最悪。焦がし、黒い煙を部屋に充満させてしまった過去があるほどで、美味しいクッキー作りは夢のまた夢。
それでも、ユアンにそのことを知られてはいけない。以前「女は、料理が上手い方がいい」と言っていたことを思い出したイリアは、自分が料理下手ということを必死に隠していく。
その時、イリアに対して衝撃的な内容が突き付けられた。それは「イリアの手作りクッキーを食べてみたい」と、ユアンが言ってきたのだ。勿論、簡単に了承できる内容ではない。動揺し焦るイリアにユアンは止めともいえる笑顔を向け、一瞬にして陥落させてしまう。