エターナル・フロンティア~前編~
「どうかな?」
「こ、今度……」
「そう、楽しみにしている」
「が、頑張ります」
とんでもない約束をしてしまったと後悔してしまうが、ユアンに対しての好感度を上げるチャンスだと前向きに考えていく。何より、ユアンの笑顔は無敵で最強である。これを間近で見てしまうと「嫌だ」と、断ることが絶対にできなかった。寧ろ、簡単に了承してしまう。
「湧いている」
「えっ! ああ!」
「気を付ける」
「は、はい」
噴き出している湯気に直接触れてしまったのか、イリアは慌てて手を引っ込める。そして痛む手に視線を落とすと、赤く染まっていた。幸い、火傷はしていない。そのことに胸を撫で下ろすと、お湯が入ったポットを手に取る。そして、オズオズとコーヒーを淹れていく。
「量は、少なくていい」
「はい」
「それと、落ち着くように」
「は、はい……きゃあ!」
「……ランフォード君」
ユアンに見詰められているという緊張から、イリアはインスタントコーヒーを入れ物ごと床に落としてしまう。散乱した、こげ茶色の黒い塊。イリアはしゃがみ込むと、両手でそれを一箇所に集めていく。見兼ねたユアンは隣の部屋に戻ると、小型の掃除機を持って来た。
「これを使うといい」
「すみません」
「一体、どうしたのかな」
「いえ、考え事を――」
「それはいけない。何か、悪いことでもあったのかな。僕でいいのなら、いつでも相談に乗る」
「いえ、大丈夫です」
流石に、クッキーのことを気にしているとは、相談することはできない。それにより、料理が苦手というのがわかってしまう。イリアはそのことを隠すように誤魔化していくと、掃除機を受け取る。そして電源スイッチを押すと、インスタントコーヒーを丁寧に吸い込んでいく。