エターナル・フロンティア~前編~
相手がユアンであったので、イリアは助かった。彼は厳しい一面を持っているが、公私混同する性格ではない。だからイリアが天然の性格を表面に出そうが、問題定義として追求することはしなかった。それが別人であったとしたら、イリアは危ない位置に立っていたに違いない。
「ランフォード君らしい」
「そうでしょうか」
「ああ、そうだね」
何を思って「らしい」と、言ったのか。だが、ユアンは明確な回答を述べることはしなかった。それはユアンの個人的な心象で、他の者達が同じ心象を持っているとは限らなかった。
その為、それ以上口を開くことはなかった。ただ、無言のままで隣の部屋へ向かうと、ソファーに腰を下ろす。そして、コーヒーを口に含んだ。一方イリアは立ち尽くし、動こうとしない。
「どうした?」
「い、いえ……」
「座らないのか?」
「す、座ります」
「それなら、どうぞ」
イリアはクッキーとコーヒーが入ったマグカップを手に、ソファーに腰掛ける。そしてそのふたつをテーブルの上に置くと、ユアンの顔を見るのが恥ずかしいのか黙り込んでしまう。今まで、意識はしていなかった。しかし今の「らしい」発言で、過度に意識してしまう。
一体、ユアンは何を――
だが、真意を問い質すことはできない。
それにより、嫌われてしまう。
その考えが強かった為に、妙に萎縮してしまう。
「緊張している?」
「……はい」
「先程は、元気だったよね」
「は、はい」
「だから、女は――」
イリアの耳に届かないように、ユアンは囁く。それは彼の本音で、イリアを含めて多くの女性に対しての印象であった。気分がコロコロと変わり、いまいち把握し辛い。そして、それを隠そうとする。別にユアンは、隠してほしいと思ってはいない。寧ろ、大っぴらに外に出してほしいと考えていた。時と場合という言葉も存在するが、プライベートは別問題だ。