エターナル・フロンティア~前編~

 相手がユアンであったので、イリアは助かった。彼は厳しい一面を持っているが、公私混同する性格ではない。だからイリアが天然の性格を表面に出そうが、問題定義として追求することはしなかった。それが別人であったとしたら、イリアは危ない位置に立っていたに違いない。

「ランフォード君らしい」

「そうでしょうか」

「ああ、そうだね」

 何を思って「らしい」と、言ったのか。だが、ユアンは明確な回答を述べることはしなかった。それはユアンの個人的な心象で、他の者達が同じ心象を持っているとは限らなかった。

 その為、それ以上口を開くことはなかった。ただ、無言のままで隣の部屋へ向かうと、ソファーに腰を下ろす。そして、コーヒーを口に含んだ。一方イリアは立ち尽くし、動こうとしない。

「どうした?」

「い、いえ……」

「座らないのか?」

「す、座ります」

「それなら、どうぞ」

 イリアはクッキーとコーヒーが入ったマグカップを手に、ソファーに腰掛ける。そしてそのふたつをテーブルの上に置くと、ユアンの顔を見るのが恥ずかしいのか黙り込んでしまう。今まで、意識はしていなかった。しかし今の「らしい」発言で、過度に意識してしまう。

 一体、ユアンは何を――

 だが、真意を問い質すことはできない。

 それにより、嫌われてしまう。

 その考えが強かった為に、妙に萎縮してしまう。

「緊張している?」

「……はい」

「先程は、元気だったよね」

「は、はい」

「だから、女は――」

 イリアの耳に届かないように、ユアンは囁く。それは彼の本音で、イリアを含めて多くの女性に対しての印象であった。気分がコロコロと変わり、いまいち把握し辛い。そして、それを隠そうとする。別にユアンは、隠してほしいと思ってはいない。寧ろ、大っぴらに外に出してほしいと考えていた。時と場合という言葉も存在するが、プライベートは別問題だ。
< 285 / 580 >

この作品をシェア

pagetop