エターナル・フロンティア~前編~
勿論、相手は苦笑いをするだろう。しかし今のところ、頼める相手はソラしかいなかった。
それに、母親は――
正直、あまり頼みたくなかった。
ソラの腕前は高い。だが、ひとつ問題が生じる。それは、料理が上手すぎるということだった。素人に近いイリアの腕前。相手はプロクラスの腕前なので、果たして付いていくことができるか。
しかし、何事も挑戦しないとはじまらない。そう決意したイリアは、ソラに頼むことにする。真剣な表情で考え事をしているイリアに、ユアンは言葉を続けてくる。それはパーティー以上に驚き、尚且つ喜ばしい内容であった。それは、ユアンが料理を作ってくれるという話だ。
「作れるのですか?」
「手の込んだ物は無理だ」
「でも、作れるのは……」
「ランフォード君は、作れないのかな?」
「い、いえ……」
危なく、本音を言いそうになってしまう。今、ユアンに料理を作れないと知られてはいけない。知られた瞬間、嫌われてしまうと思い必死に嘘をつき続けることにする。偽りは同時に違和感を生み出してしまい、ぎこちない態度は勘のいいユアンに不信感を抱かしてしまう。
流石、多くの人間を観察してきたユアンだけあって、この態度の裏に隠された本心を瞬時に見抜いてしまう。だが、直接指摘はしない。指摘するだけの価値がなく、尚且つ可哀想と判断したからだ。
「得意料理は?」
「え、えっと……」
「肉・魚・野菜。ジャンルは多い」
「……お菓子」
「菓子?」
「お菓子が、得意です」
「ああ、そうなんだ」
「でも、下手で……」
イリアの得意料理が判明した瞬間、ユアンは更に注文をしていく。それは、クッキー以外の菓子を用意してほしいというもの。得意料理というのなら、特に問題はないだろう。ユアンは満面の笑みを浮かべながら、イリアの菓子料理に期待していく。この素敵な笑顔を見てしまうと断るに断れなくなり、イリアはソラの仕事スケジュールが気になってしまう。