エターナル・フロンティア~前編~
この部屋は、一体――
内装はシンプルで、生活に必要な最低限の物しか置かれていなかった。そして真っ先に視界の中に飛び込んできたのは、パソコンが置かれている机に数枚のディスクと何かの資料。
パソコンは、立ち上がっていた。どうやらユアンが先程まで弄っていたのだろう、画面に文章が表示されている。
(……これは)
イリアはパソコンの側へ行くと、表示されている文章を黙読していく。内容は能力研究であったが、文字を読んでも意味不明な点が大きい。アカデミーで高度な勉強をしていたとしても理解できず、イリアの周囲に「?」マークが生まれていく。何より、専門用語が満載だ。
流石、最高レベルの分野。
以前、ユアンが書いたレポートを読んだことがあったが、これはあの時のレポート以上に難しい。だが、理解できる箇所があった。それは「彼等の特徴は、二種類に分類される」という部分だった。
その文章が、気に掛かる。
イリアは息を呑み更に文章を読み進めていくと、その時ユアンの声音が耳に飛び込んできた。
(……あっ!)
まさか、ユアンがこの部屋に戻って来るというのか。イリアは慌てて左右に視線を走らせると、どこかに隠れる場所がないか探す。しかし、導き出す結論はひとつしかなかった。それは、この部屋から早く出てユアンに勝手に部屋に入ったことに気付かれないことである。
慌てて部屋から出ると、廊下の角を曲がり身を隠す。それと同時に、ユアンが携帯電話で話しながら先程の部屋に入っていく。そのギリギリのタイミングに、イリアはホッと胸を撫で下ろす。
心臓は、激しく鼓動していた。足はガクガク震え、吐き出しそうになってしまう。今まで、これほど緊張したことはない。アカデミーの入学試験の時も緊張をしたが、今ほどではなかった。
一瞬、罪悪感がイリアを包む。それは、すぐに霧散した。そう、ユアンの会話の内容が聞こえてきたのだ。
「――わかっています」
それは低音の声音であり、何処か鋭いものが感じられる。普段のユアンでは考えられない口調に、イリアは声が聞こえてきた方向に耳を傾ける。パソコンの内容同様に、勝手に聞いていいものではない。しかし、一度火がついてしまった好奇心を抑えることは無理に近かった。