エターナル・フロンティア~前編~
(ラドック博士は……)
ふと、両者の立場を考えていく。
勿論、ソラが置かれている立場はわかっている。わかっているがイリア自身それをどうこう言う権利はなく、また勝手に口を出していい問題でもない。イリアはソラの幼馴染であって、研究を行っているのではない。しかしだからこそ、過度に心配してしまう時があった。
すると、それに合わせるかのようにユアンの言葉が混じる。内容は、イリアが気にしていることだった。
それは、ソラ達が置かれている状況を愁えるものだった。
力を持つ者は、偏見の対象。
彼等は、別人。
淡々と語っていくユアンの言葉の裏側に、真相が隠されている。ある意味、ユアンが言っている内容が世界の実情に一番近かったが、イリアはそれらを聞いても全くわからなかった。
理解できない。
難しい。面白くない。現実味が薄い。理由が様々だが、知識の少ない者にとっては苦痛に等しかった。
しかし能力関係の研究を行う科学者として、ユアンから誘われている。それを考えると「難しい」と言って、片付けていいものではなかった。勿論、盗み聞きはやってはいけない。
だが、科学者として生きていくのなら、このようなことで好奇心が疼く。別の意味で好奇心旺盛のイリアであったが、肝心の部分はからっきし。科学者として働いていない今、これ以上の興味を示すことはしない。そうこの時点で、イリアは科学者失格に近い位置にいた。
刹那、イリアの服のポケットに入っていた携帯電話が震え出す。突然の出来事に、イリアはか細い悲鳴を発してしまう。だが寸前で口許を塞ぎ、ユアンに気付かれていないかどうか確かめる。
息を殺し、耳を済ませる。すると、ユアンの会話は何事もなかったかのように続いていた。そのことにホッと胸を撫で下ろすと、イリアは携帯電話をポケットから取り出し誰がメールの送信相手を確かめた。すると画面に表示されていた名前は、クラスメイトのものであった。
(驚かせないで)
送信した相手が判明した途端、安堵の溜息を付く。その反面、このような状況下に置かれている時にメールを送信してきたことに、自身の運の低さを呪う。ユアンに気付かれないように溜息を付くと、送信相手の名前を見つつどうしてこのような時に送信してきたのかと肩を竦める。