エターナル・フロンティア~前編~
好奇心の赴くままに――
簡略的に述べれば、そのようなもの。しかしイリアは、口をつむぐ。そう、言うに言えないのだ。
「答えられない理由があるのかな?」
「い、いえ……」
「それなら、話してほしい」
あくまでも、穏やかな口調で尋ねていく。無論、恫喝(どうかつ)し聞き出すという方法もあるが、相手は女性。流石にそれを行いたくないのか、ユアンは冷静に何度も尋ねていくと、とうとう白状する。
「……そうか」
「す、すみません」
「いや、構わない」
口許は緩んでいたが、目は笑っていない。内心「何をしている」と怒鳴りつけたい心境でいっぱいであったが、此処は感情を押し殺す。あれは、仕事に関しての話であった。しかし、表面上の問題。能力研究も、浅い部分と深い部分が存在する。そしてあの電話は、前者。
特に聞かれても差支えの無い内容だが、イリアが行った行為は褒められたものではない。隠れて立ち聞きとは、ユアンが嫌うひとつ。何より、信頼関係を著しく悪い方向へ持っていく。そして聞いてはいけない内容を聞いてしまった時の処遇ほど、恐ろしいものはなかった。
「しかし、ランフォード君も困ったものだ。このようなことは、他の者にやってはいけない」
「……気をつけます」
「これから、色々と大変になっていく。他人の行為を覗き見するというのは、程々にしておいた方がいい」
「……はい」
「信頼に関わる」
それは、ある意味で宣告に近い言葉であった。
イリアが向かう場所は、光か闇か――特に後者の場合、気を付けないといけない。ユアンはそれを間接的に教えていくが、イリアは理解していない。いや、理解できないでいた。今までお嬢様生活という生易しい環境で成果していたので、危機管理能力が上手く発達していない。
それがイリアの最大の欠点で、同時に命の危機も呼び込む。それにより、ユアンが注意を促しているというのに、首を傾げる一面があった。流石に、そのような態度を見てしまうと、何も言えなくなってしまう。そして肩を竦めてしまうと、もとの場所へ戻ろうと提案した。