エターナル・フロンティア~前編~
無論イリアも努力し続けていけば、腕前は上がっていく。そして一時期「頑張らないと」という想いで、料理を学ぼうとしていた。しかし懸命に努力したところで、なかなか上手くならない。科学者としての勉学は必死に行っているのだが、それ以外はからっきしである。
「私が料理を作ったら、食べて頂けますか?」
「菓子を作って、持ってくると約束したが……」
「そ、そうでした」
「その時に、食べさせてもらう」
話術に関していまいちのイリアは、長く会話を続けていると襤褸(ぼろ)を出してしまう。お菓子を作って持ってくると約束したというのに、食べて頂けるかどうか尋ねる。その矛盾点にユアンは、首を傾げてしまう。一方イリアは、自分が言っていることに恥ずかしさを覚えたのか赤面していた。
「それでは……美味しく……」
「僕も、美味しい料理を用意しないと」
「ラドック博士なら、大丈夫です」
「それは、有難う」
ほのぼのとしたやり取りが、続いていった。ユアンは微笑を浮かべながら言葉を返していき、イリアは自身が置かれている状況に更に赤面していく。そして夕方近くまで、二人は楽しい会話を続けていた。
◇◆◇◆◇◆
「今日は、有難うございます」
「本当で、此処でいいのか?」
「はい。自宅の前ですと、親が煩いですので」
「親とは、そういうものだ」
年頃の女の子を持つ親は、娘の身体問題を過度に心配すると話す。特に男女関係には敏感で、ユアンに送ってもらった光景を見たらイリアの両親は何と言うか。ソラも、何だかんだで気にしている。それを思い出したイリアはクスっと笑うと、心配性だと愚痴を言っていった。
「そう言ってはいけない」
「そうでしょうか」
必要以上に縛り付けてくる、イリアの両親。時として鬱陶しいと感じてしまうが、親という生き物はそれが当たり前。そしてユアンは、諭すように親心の何たるかを丁寧に教えていく。イリアも親になったら理解できると言うが、今のイリアには難しい言葉のひとつだった。