エターナル・フロンティア~前編~
親は、鬱陶しい存在。
自身の行動を束縛する。
何より、口煩い。
理由を上げていけば、まだまだ出てくる。
溜まったものを吐き出すように語っていくイリアに、ユアンは苦笑いを浮かべてしまう。研究所の中にも両親を嫌っている科学者は多いが、それ以上に尊敬し感謝しているという者も多かった。
要は、見方の問題であった。今まで育て、教育を受けさせてくれた恩――というのは、古臭い考え。無論、ユアンはそれを刻々と語っていくことはしない。何より今の状況で説教に似た語りは、逆効果になってしまう。
本能的にユアンは、それを感じ取っていた。
それにイリアは、相当両親を嫌っている。
「私は、大人です」
「何をもって、大人と言うんだ?」
「一応、就職は決まりました」
「確かに、そうだね」
しかしそれは、社会的立場を示すものであって「大人」という枠に当て嵌めていい事柄ではない。
ユアンが言いたいのは、精神面での成熟。それができてこそ、真の大人といえよう。今のイリアは、身体は成長しているが肝心の部分では青い果実に等しい。「研究所に就職した」という部分だけを振り翳し、自身の成長を止めてしまっている。これでは、何もならない。
だが――
「まあ、僕がとやかく言う問題じゃない」
それが、ユアンの本音。
根本的部分の説明を言葉で行わなくとも、就職し本格的に働くようになったら嫌でも学んでいく。ユアンは今、イリアに優しく接している。しかし自身の部下となった場合、容赦はしない。
特別扱いはしない。
それに、どうでもいい問題だ。
「両親とは、上手くやっていくように。何事も感謝だ」
「ラドック博士が、仰るのでしたら……」
元気横溢というのが、イリアの特徴。それは褒められた点であるが、いかんせん難点も多い。物事を前後左右、あらゆる点から分析せずに「ラドック博士の――」という言葉で、簡単に受け入れてしまう。ユアンにしてみれば信頼されていて嬉しいが、人生の経験不足は否めない。