エターナル・フロンティア~前編~
彼女が語っているのは、ユアンの誘いごと。勿論、ソラに言っていい内容ではない。しかし、イリアは言う。何より、これを隠しておくわけにはいかなかったからだ。そう、二人の仲が関係するからだ。
「イリアは、どうするんだ」
「わ、私は……」
「遠慮することはないよ」
「ソラは、嫌がらないの?」
「確かに、彼等がやっていることは気に入らない。だからといって、イリアが同じになるとは思わない」
もしイリアがその道に突き進むというのなら、タツキと同等の立場に立って欲しいと思う。彼女は無鉄砲な部分があるが、悪い人間ではない。寧ろ、相手の心情を考えてくれている。
ソラはイリアに、そのようになって欲しいと願う。願うからこそ、イリアが言う道を進めた。
「……うん」
「やっぱり、タツキに教えてもらわないと」
「……不安」
「大丈夫。タツキは、優しいから。まあ、無礼な人間には厳しかったりするけどね。平手打ちが飛ぶ」
「こ、怖いわ」
ソラの説明に、イリアは本気で恐れてしまう。しかしソラは、何度も大丈夫と言う。だが、ソラはわかっていない。タツキが優しい一面を見せているのは、ソラだけ。それ以外の人物は、本当に厳しい。相手が同性であったとしても、関係ない。殴る時は、本気で殴る。
それを知らないからこそ、ソラは笑ってタツキについて語り、己の心情を混ぜつつ説明した。
「難しい?」
「タツキは、昔高い地位にいたからね。それに比例して、教え方は独特かもしれない。それでもいい」
「も、勿論」
「じゃあ、頑張って」
「うん!」
ソラが受け入れてくれたことに、イリアは胸を撫で下ろしていた。彼女は内心、ソラが不機嫌な表情を浮かべると思っていた。しかしこのように受け入れてくれたことは、予想外。同時に、懐が大きい人物ということを知る。その瞬間、イリアはソラに抱き付いていた。