エターナル・フロンティア~前編~

 予想外の行動に、ソラは驚く。イリアが抱き付いているのは、ソラの首。それにより、一瞬息が詰まった。だが、苦しいということはない。その為、ポンポンっとイリアの頭を叩く。

「イリア」

「ソラは、優しいから」

「だからって……」

 互いに幼馴染同士だが、相手の行動を全て把握しているわけではない。勿論、今回の行動もそれに含まれている。そのことにソラは苦笑してしまうが、悪い気分はしていない。ソラは、それを表情に出すことはしない。そしてイリアに対して、ビシっと指摘をしていく。

「真面目に、勉強をするように」

「わかっています」

「期待しているよ」

「何を?」

「日頃、タツキに頼んでいるんだ。だけどイリアが勉強してくれるというのなら、イリアに頼めるし」

 と言って、タツキに頼むのが嫌だということではない。やはり、幼馴染の方が気楽に頼めるという面で、利点が多い。だからこそ、イリアに懸命に勉強に励んで欲しいと願ってしまう。

「人体実験」

「えっ!」

「冗談よ」

「言っていい冗談と、悪い冗談があるよ」

 ソラの経験上「人体実験」という言葉に、過敏に反応を示してしまう。今でも後遺症に苦しみ、身体を縛り付けている。それにより、冗談であったとしても言ってほしくない単語だった。

 しかしイリアは、ソラが人体実験の対象だったということは知らない。その為、不思議そうに首を傾げている。だが、掃除した血痕を思い出すと、一瞬にして顔面蒼白と化していった。

「……御免なさい」

「何?」

「私、知らないことが多いから」

 擦れた声音に対し、ソラは頭を振る。この世界、知らなくていい内容は多い。知って不幸になるというのなら、知らないまま幸福な人生を歩んでほしいもの。イリアは、勉強をしたいという。それに関して特に否定はしないが、ソラはイリアが闇に落ちないことを願う。
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