エターナル・フロンティア~前編~
静寂の中に、足音が響く。
よって、ソラは反応を示した。
だが、言葉は出さない。
ただ、相手を凝視する。
「気分は、どうかな」
「……普通」
やっとの思いで、言葉を吐き出す。相手のことが気に入らないという意味合いと、身体が気だるいので、吐き捨てるような声音となってしまう。無礼な態度であったが、相手は普通に振舞う。
ソラの側にやって来た人物――ユアンは、ソラが自身を嫌っていることを、前々から知っている。だからといって、動揺することも無い。立場的に、自分の方が優位だとわかっているからだ。
力を持つ者は、科学者の助けが必要。
それに彼等がいるので、普通に生活が送れる。
ユアンは無言で、ソラにそれらを伝える。
一方のソラも、そのこと身を持ってわかっている。差別は、日常茶飯事。特に、罵倒が一番精神に堪える。彼は精神的に強いので何とか耐え続けているが、限界が近いのも確かだった。
「誰に、メールをしていた」
「誰でも、いいじゃないですか」
「気になる」
「……貴方も知っている人です」
下手に嘘を付いても、ユアンは簡単に見抜いてしまう。よって、ソラは正直に話す。しかし、言葉は遠回し。だが、勘のいいユアン。これだけの内容で、相手を瞬時に見抜いていた。
「幼馴染か」
「……そうです」
「仲がいい」
「嫌味ですか?」
「そういう意味で、言ってはいない」
「では、どのような……」
「そう、邪険な言い方をしない」
困ったような素振りでそのように言っているが、ユアンの場合は言葉と感情が一致することは少ない。そして今回も、違っていた。ユアンがソラの本音を簡単に見抜いたように、ソラも同じように見抜く。だからといって、ユアンが動揺することは無い。寧ろ、楽しんでいた。