エターナル・フロンティア~前編~

 誰も、ユアンの心を読むことができない。

 無論、真相の把握も難しい。

 ソラは、表情を歪める。

「そんな、顔をしない方がいい」

「誰の所為ですか」

「面白い見方だ」

「いえ、貴方は――」

 先の言葉は続かない。何を思ったのか、ユアンがソラの首を片手で絞めたのだ。そして、押し倒す。

 ガタン。

 衝撃で、身体が椅子ごと倒れてしまう。

 身体全体に激痛が走り、ソラは呻き声を発した。

「君達は、実験道具だと忘れてはいけない」

「それが……本音」

「現に、そうじゃないか」

 ソラの首を絞め続けているユアンの瞳が、怪しく輝く。これこそ、彼が持っている本質部分。

 彼は、ソラを実験の対象として見ている。その証拠に、殺そうと思えば簡単に殺せる状況であったとしても、ユアンはそれを行うことはしない。それが、ソラを失いたくない真情が関係していた。

 ソラは、稀に見る力の持ち主。

 失うのは惜しい。

 徹底的に、研究を行いたい。

 それは、研究を行なう者の性というべきか、ユアンは首を絞めていた手を離すとクスクスと笑う。

「反応が楽しい」

「……悪趣味だ」

「まあ、いいじゃないか」

「オレは……迷惑だ」

 絞められていた首を両手で押さえると、ソラは何度も咳き込む。そして身体は、新鮮な空気を求めていく。しかし、何度も何度も求めていっても、なかなか気分がいい方向へいかない。

 現在、ソラの体調が悪い。それは先程まで、好き勝手に身体を弄くられていたのだ。その相手は、ユアンではない。末端の科学者というわけではないが、彼等は貪欲に知識を求め人権という名前は彼等の前では無意味に等しい。切り刻まれる寸前まで、陥ってしまった。
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