エターナル・フロンティア~前編~

 今ソラは、白を基調とした手術着を纏っている。そして白の中に浮かぶ赤い色彩は、鮮血。纏っている服の影響で、表面上では判断し難い。だが服を脱げば、巻かれている包帯が目立つ。彼等は、其処までソラを徹底的に追い詰めていた。それを考えると、ユアンはまだ優しい。

 それに、途中で止めたのはユアンだった。

 もし、ユアンが止めなかったら――

 血の海に、沈んでいた。

 ユアンは、命の恩人。

 しかし、ソラは認めたくなかった。

 刹那、大声で叫んだ。

 だが、叫び声は傷付いた身体に響く。それにユアンの攻撃で、全身が打撲状態。それらが合わさり合い、ソラを苦しめていく。何度も何度も咳き込む。途中、空中に血が舞い飛んだ。

「無理はしない方がいい」

「う、煩い」

「強情だ」

「誰も、貴方に……」

「君はそのように言うが、僕は君を助ける。その方が、いいだろう? 幼馴染に、会えないだろう」

 その言葉は、確実にソラを精神を傷付ける。

 咳き込み苦しがっているが「幼馴染」の単語は、強力だった。それを表しているのか、微かに眼元に涙が滲む。

「正直だ」

「……気に入らない」

「それでいい。君は、弱味を見せてほしくない。僕が、好きに助けるのだから。さあ、手を――」

 一瞬、手を差し出すのを躊躇う。

 だが、苦しみからの解放を求めてしまう。

 嫌い、大嫌いな相手。

 だが――

 渋々、手を差し出した。

 本音の部分では、ユアンに救いを求めたくない。

 それでも、求めるのが最善の選択。

 どのように転んでも、科学者がいないと生きていけない。

 情けなくて悔しくて――それでも、ソラは大量の涙を流そうとはしない。懸命に、感情を抑えていく。
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