エターナル・フロンティア~前編~

 惑星(ほし)の数だけ、宗教が存在していた。それらがごちゃ混ぜとなり、急速に「宗教」は、衰退の道を辿る。現在、神を信じている者は少ない。だから、神話も消え去る物語と化していた。

 科学力は、神を凌駕した。

 まさに、この言葉が似合う。

 しかし何とか生き残っている宗教家に言わせれば、神を冒涜する行為。だが、多勢に無勢。

 この状況は、ソラ達力を持つ者が置かれている現状に似ている。どの時代も、多数が優勢。少数の言葉は掻き消され、言葉として認めてくれることはない。それが、世界を形成していた。

 ユアンは、ソラを見下す。

 これこそ、両者の力関係を明確に表しているもの。

 確かに体内に有している力でいえば、ソラの方が遥かに上。感情の起伏次第で相手を簡単に殺害することが可能だが、それを行わない。行った瞬間、科学者と同種になってしまうからだ。

 相手に、嫌悪感を抱いている。だからといって、殺害の対象としては見てはいけない。ジレンマに苛まれる毎日が続く。それを考えると、科学者は楽でいい。本能のままに、動けるのだから。だが、ユアンは何処か違う。それを証明しているのが、次に発した言葉だった。

「僕は、君を殺さない」

「何?」

「言葉のままに受け取ってほしい」

 一体、何を言っているのか。完全に、ユアンの話術に嵌ってしまっていた。ソラ自身話術に関しては上手いが、上には上が存在する。流石、数多くの要人と渡り合ってきた人物。精神的にタフで、滅多に己の心情を表情に出すことはしない。よって、何を策略しているかわからない。

 ソラは、沈黙を続ける。

 すると、ユアンは更に言葉を続けていく。

「取引だ」

「取引?」

「お前に、時間を与える」

「必要ない」

「そう言うな。幼馴染に会うのだろう」

「関係ない」

「いや、関係あるね。この先、君は再び捕まる。先程、話を聞いた。再度、実験を行うと――」
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