エターナル・フロンティア~前編~
「それに、夢を叶えないと」
イリアの夢――
それは、アカデミー入学前から決めていた。身近に目指す人物がいたというのが大きな理由だろうが、知られざる物事の本質を見極める。イリアはそれをやってみたいと思い、その道を選択する。
彼女の性格は、どちらかといえば好奇心旺盛といっていい。それが目的の夢を目指す理由として適切かどうかわからないが、研究をしている時は楽しいと思っていた。だからイリアは真面目にアカデミーに通い続け、殆ど欠席がない優等生となりそれなりの成績を修めている。
イリアの将来の夢を知っているソラは、幼馴染の迷いに少し困ったような表情を作る。自分が置かれている立場によって、相手の人生を狂わしたくない。それは、幼馴染であるから尚更のこと。だが、イリアは変に強情なところを持ち、それがある意味で欠点でもある。
「私がどのような職業に就いても、幼馴染でいてくれるかな? 無理だったら、いいのだけど」
「それは、イリア次第だよ」
「私は、いいと思っているけど……」
「なら、いいんじゃないか。オレに、遠慮することはないよ。それとも、する必要があるのかな」
「でも、父が……」
その先が言い辛いのか、イリアは途中で言葉を止める。その続きを言うことはソラを苦しめてしまい、嫌でも現実を突き付ける。しかしソラにとってはその心配は無用なものであり、逆に躊躇いを見せることが彼の立場を悪い方向へ持っていく。だからソラは、普通に接して欲しかった。
幼馴染に遠慮されると、互いの間に壁が生じてしまう。だからいつものように気さくに接して欲しく、我儘も言ってもいい。またイリアが普通に接してくれなければ、ソラは孤独に苛まれ気を許せる相手が減ってしまう。それだけは避けたいと言い、イリアはイリアでいて欲しいと願う。
「そのように言うのは、ソラだけよ。他の人はそのように言わないし、言ってはくれないもの」
「それは、わかっている。イリアが目指したい職業は、オレにとっていいものではないから」
刹那、急に車が停止する。その反動で思わず前に仰け反りそうになってしまうが、シートベルトのお陰で難を逃れた。彼の乱暴な運転に「怒っている」と思ったイリアは、恐る恐るソラの方向に視線を向ける。しかし怒っている様子はなく、それどころか肩を竦めていた。