エターナル・フロンティア~前編~
また、途中で言葉を止めてしまう。まるで、義父からの言葉を求めているかのように――
「現在、多種多様の種族が入り混じって生活を送っている。勿論、築いてきた文明文化は違う。外見や持っているスキル。それらが同等ということは、有り得ない。宇宙に繰り出した時、それはわかっているはず。いや、そのように考えないと異文化との交流はできない」
『当たり前だ』
「そう、当たり前です。義父さんがそのような考えを持っていたとは……僕としては嬉しいです」
『皮肉か』
「いえ、正直な感想です」
『ひとつ言っておく。お前を使っての研究は、上の命令だ。上が望むから、それを行なった』
「勿論、わかっています」
現在の地位に就き、様々な研究を行なってきたユアン。同時に、義父の実験と研究の意味を知る。人類の生活基盤が変化しても、世界を動かしているのは一部分の人間。下にいる者達は彼等の命令に従い、彼等が望むことを提供していかなければいけない。それが、役割であった。
権力を持つ者達の願い。
それは、不老不死だ。
過去、権力を持つ者はそれを願い続けていた。しかし、誰一人として実現した者はいない。
そもそも、不老不死は神の領域。宗教概念が乏しくなった現代でも、それに踏み込むのに躊躇う者も多い。だが、ユアンは違っていた。神の領域に魅力を感じるのか、日々不老不死に取り組む。
『矛盾している』
「何処が」
『お前は上の者に従うことと、世間の考えを批判している。だというのに、実験と研究を繰り返す』
「ああ、簡単ですよ」
要は、現在の地位が心地いいのだ。裏の世界ほど、魅力的なものはない。それに、高い地位を簡単に捨てるのも馬鹿らしい。
ユアンは自分の知識で、何処まで上り詰められるのか試したかった。上に対しては上手く演技を行い、素直に従っているように見せている。
だが、影では嘲笑う。長い物は巻かれよ――とは少し違うが、ユアンは逆に上を利用していた。