エターナル・フロンティア~前編~
それだというのに、上はユアンを支配していると思っている。全く違うということを知らず。
『恐ろしい奴だ』
「……そうでしょうか」
ユアンに言わせれば、世界の現状の方が恐ろしいそうだ。それに多くの人間が、闇の部分を持っている。
特定の人物だけを責めることはできず、寧ろ普通に過ごし安全な位置で批判している方が怖いという。
コツコツと足音をたて、部屋の中を歩く。その間、独特の解釈を加えながら持論を唱える。
刹那、足音が止まった。一拍置いた後に近くに置かれているパソコンを弄くると、壁の一部分が開いた。
現れたのは、液体の中に浮いている複数の全裸の人間。どれも青白い表情を持ち、視線は定まっていない。
液体の中にいるということで、どの人間も亡くなっている。そして死体の主は、普通の人間ではない。
全員が、力を持つ者。
性別は、関係ない。
勿論、年齢も様々だ。
死後も遺体は研究に利用されているのか、生前の姿を長く保つように保存されている。プカプカと水の中に浮かぶ死体は、精神的なダメージが強い。しかし二人は見慣れているのか、普通に過ごす。
これくらいで驚いていては、研究施設にいられない。また、出世も望めない。心が半分以上欠けたユアンは、この光景を見ても何も思わない。それどころか、怪しい笑みを浮かべていた。
『何人死んだ?』
「さあ」
『数えていないか』
「数えていても、仕方ないです。それに、そのようなことを行なっては、情が移ってしまう」
『そ、そうだな』
無数のトゲが詰まった言葉に、義父は言葉を詰まらせてしまう。ユアンは普通に喋っているが、過去の出来事を踏まえて喋っていた。
その為、リダードの声音は小刻みに震えている。そしてユアンの言いたいことを無意識に感じ取ったのか、一瞬にして立場を逆転してしまう。流石、弁論に長けているユアン。目上や年上であろうとも、簡単に勝ってしまう。