エターナル・フロンティア~前編~
これ以上の会話は無意味――自分の敗北を知ったのか、義父からの言葉はなかった。昔と違い、やけに弱弱しくなった。肉体を持っていた時は何事も進んで行い、部下を叱っていた。
しかし脳味噌だけになった今、気の強い部分も失ったのか、勝てないとわかった瞬間、沈黙する。
義父の常套手段にユアンはやれやれと肩を竦めると、周囲に視線を走らせ死体の一体一体を見た。
力を持つ者の外見上の構造は、普通の人間と同じ。だが内部、特に遺伝子構造が異なり、その部分の解明を行い不老不死の手掛かりを掴もうとしていた。理由として、肉体の欠損の再生能力が高いからだ。
老いをカバーするだけの細胞分裂を繰り返し、肉体を若々しく保つ。また、免疫機能を高め病気に打ち勝つ。言葉で言うのは簡単なのだが、それを実現するまでに至らない。その為、多くの者が頭を悩ませている。
「いつか……」
ユアンはいつか、それを実現したいと思っていた。別に上に媚を売る為ではなく、義父に言ったように己の好奇心を満たす為。また、自分が持っている知識と技術が、何処まで通用するか知りたいのだ。
「僕と君達は一緒……だ」
ポツリと呟く言葉は、部屋の中に霧散する。自分の身に起こった体験は、何処か優しさを生む。
それが、ユアンの表と裏を作る。しかしそれを本当の意味で理解できるのは、今のところ一人しかいない。