エターナル・フロンティア~前編~
「どうした?」
「私って、御人好しなのかな?」
「何故、そう思う」
「だって、簡単に物を貸すから」
「別に、それは関係ないと思う。物の貸し借りは、よくあることだし。この車だって、借りてきた物だし。あまり貸し借りをしたいと思う相手ではないけど、今回は仕方ない。車がない方が悪いんだし。今度、購入するかな。貸しばかり作っていると、利子がついて面倒だ」
懸命に、イリアを励ましていく。そんな普段見られない幼馴染の態度に、イリアは吹き出しクスっと笑い出す。眉間にシワを寄せている厳しい表情から、いつもの屈託のない笑顔に戻ったことにソラは安堵感を覚えたのか、服が欲しいという彼女の願いを聞いてやることにした。
「本格的に働くようになったら、考えてもいいけど。ただし、高額の買い物は此方の生活に関わる」
「えっ?」
「服が欲しいんだろ?」
「だって……」
「サービスだ」
ソラの言葉が余程嬉しかったのだろう、イリアの表情が急に明るくなった。更に小さくガッツポーズを作り、小声で「どんな服がいいかしら」と、呟く。そんな可愛らしい面を見せているイリアを一瞥すると、ソラは自分の甘い一面に嘆き同時に情報の漏洩を危惧する。
それにこのような情報は一般的に漏れやすいもので、油断していると友人に知られてしまう。だから念には念を入れ、イリアに今回のプレゼントについて誰にも話してはいけないと頼む。
「どうして?」
「あいつは、やけに情報網が広いんだ。イリアだって、会ったことはあるだろ? あいつだよ」
一瞬、誰のことを示しているかわからなかったが、一人の人物の顔を思い出す。過去に一度しか会ったことのない人物であったが、雰囲気がいい人ということは覚えている。そして、友人であると同時に苦手としている相手。それは、初対面の時に見せたソラの態度で確信できた。
まさに、正反対の性格といっていいだろう。物事に動じることの少ないソラに対し、相手は自由奔放でどのような人物であろうと友人関係になってしまう大らかな友人。そのあまりにも対照的な性格同士にイリアは驚いたことを記憶しているが、決して嫌味がある人物ではない。