エターナル・フロンティア~前編~
(さて、どうするか)
現在行なっている実験に割り込んで、この理論を証明する為の実験を平行して行なうべきか。
だが、周囲に何と説明すればいいか迷う。
この実験は現在の実験以上に、科学者に掛かる負担が大きくなってしまう。しかし高みを目指す者として、避けては通れない。それに高い位置を目指さないと、信頼を失ってしまう。
なら――
行なうしかない。
ユアンは画面から視線を逸らすと、そのまま天井を見上げる。何の変哲もない、真っ白い天井。その端の部分に焦点を合わせると、新しく行なう実験について計画を練っていった。
(そう、こうすれば……)
主軸の部分は、簡単に決まった。問題は、肉付きの部分。と言って、焦ってもいい内容は思い付かない。ユアンはやれやれという感じで肩を竦めると、瞼を閉じ意識を集中し一人の世界に入っていった。
◇◆◇◆◇◆
約束の場所。
それは、レナ・コーネリアスの自宅。
現在彼女は、一人で暮らしている。彼女の夫は、早くに亡くなっている。そして、子供はいない。
レナの自宅は小高い丘の一番上に建てられており、実に眺めがいい。ユアンは広い窓の前に立ち、文明が生み出した人工的な明かりを瞳に映す。その後ろで、レナは飲み物の支度をしていた。
「いいです」
「そうかしら。長い話、飲み物は必要よ」
「……はい」
返事を返すと同時に、ユアンは振り返る。そして思い足取りでソファーの側まで行くと、レナの言葉を待ちソファーに腰掛けた。それに続くようにレナも腰掛けると、ユアンのカップに紅茶を注いだ。
液体は琥珀色ではなく、血のように赤い。珍しい色の紅茶に驚きつつも、一口口に含んだ。これはハーブティーの一種なのか、舌の上を滑る液体は何処か甘い。ユアンはレナが出した紅茶が気に入ったのか、二口目は香りを楽しみながら赤い液体の味を楽しんでいった。