エターナル・フロンティア~前編~
ユアンは、的確にその点を突いていく。流石というべきか、レナは全てを話すことにした。
動物実験の失敗。
科学者にしてみればどれは当たり前の出来事で、特に驚くことはなかった。しかし、失敗は普通の失敗ではない。実験に使用した動物の身体が、変形し奇形の生き物に変化したのだ。
それも全て。
理由は、簡単だった。人工的に力を持つ者を作る場合、遺伝子の部分から弄らないといけないからだ。
結果、この世の者とは思えない生き物を生み出してしまった。そして、凶暴性も増したという。
変化した生き物は科学者達に襲い掛かり、重症を負わしていく。その為、何人もの科学者が病院送りになったという。
「当たり前です」
「ええ、そうね」
「以前、資料で読みました。過去、実験中に多くの怪我人が出たことを。このことでしたか」
その言葉に、レナは無言で頷く。と言って、実験中の事故もつきもの。これくらいで、驚くことでもない。
しかし、レナは言う「過去と現実が違う」と――
現在、力を持つ者に対しての風当たりは悪く、どのような非道な実験と研究を行なっても、表面に現れることなく揉み消しが可能だ。それに、一般人も見て見ぬフリをしてくれる。
だが、過去は違う。現代より科学者の動きが表面に出易く、寸前でお蔵入りにして身の安全を図ったのだ。そしてこの実験と研究に参加した者達は、一様に口をつむぎ記憶を封じた。
「人間を使用したくなかったですか?」
「な、何を――」
「正直に、言って下さい」
「本当は……」
最後まで言葉を言うことに躊躇いが強いのか、レナは途中で言葉と止めユアンから視線を逸らす。
このまま沈黙を続ければ、逃げられる――という考えもなくはないが、現在の雰囲気でそれは不可能に近い。レナは何度も長く重い溜息を繰り返すと、真っ直ぐな瞳でユアンを見詰めると、自分の考えを消えそうな声音で伝えていく。本当は、使用したかったということを。