エターナル・フロンティア~前編~
それに気付いている者は、ごく僅か。そして現在、ユアンが研究の大半を牛耳っているといっていい。
能力研究をスタートさせたのはレナであれば、大きく発展させたのはユアン。だが、それは悪い面での発展だった。もともとレナを含め初期の研究に携わっていた者達は、彼等の能力を悪用する為に研究を行なっていたのではなく「未知の力の解明」を目的としていた。
しかし彼女達の研究を引き継いだ者達はおかしな方向に持って行き、ユアンが今の状況に定着させた。勿論、反論した者もいたが、急激に発展した中で異論を唱えたところでかき消されてしまう。
それに、世界背景も変化しつつあった。
能力者は悪。
いつからか、そう呼ばれるようになった。
理由は、わからなくもない。
しかし彼等は、表立って生活をしているわけでもない。これに関してレナは、疑問を抱いていた。
ひとつの物に批判が集まるのは、昔からの出来事。だが逆に、それに対しての肯定の意見が存在していいものだ。しかしその肯定の意見は全て潰され、批判が正しいとなっている。
なら――
裏で、何者かが暗躍していると考えるのが正しい。
それも、大きい存在が。
ユアン相手に嘘偽りの会話をしても、いいことはない。それに深い部分を知っているユアンから、現在の内情を聞き出したかった。第一線から離れた今も、彼女の周囲には監視の目がある。
今回はユアンと一緒ということで、監視の目が緩んでいる。要は、彼が持つ力が関係していた。
本来であったら、ユアンはこういうことで力を使う人物ではないが、レナと会い会話をするということで力を使用したのだった。
お陰で、互いに腹を割って話をすることができた。
いつもの彼であったら、会話の中にはぐらかしを入れていくが、相手がレナということで曖昧な言葉は用いない。
今回は、素直に彼女の質問に答えていく。多くの惑星に広がっている、批判の切っ掛けを。
それは、一部の権力者が故意にばら撒いた偽りの噂。このような悪い噂をばら撒いておけば、非道な研究が裏で行なわれていたとして大して大騒ぎに発展しない。その予防策であった。