エターナル・フロンティア~前編~

 しかし複数の人の間を渡っているうちに、本来の噂に尾鰭が付き姿を大幅に変化させていく。

 苛めた。

 殺した。

 変質者の集まり。

 鬼畜。

 また、能力者の側に行くと「悪いウイルスに感染してしまう」という話まで生まれていた。

 勿論、全ては嘘。

 これらは力を持たない者が勝手に作り出した、一種の悪い意味での妄想のようなものであった。

「人間一人は、恐れるに足りず。しかし複数集まれば、これ以上内というほど厄介な生き物に変化します」

「それに関しては、同じ意見を持っているわ。彼等を批判している者は、それが楽しくて仕方ないのかもしれないわ」

「残念ながら、僕はそのように思ってはいません。楽しいという生半可な言葉で、表現できません。彼等は、明確的な敵意を抱いています。面と向かって何かを行なうわけではなく、間接的に」

 一対一で対立した場合、確実に負けてしまう。だからこそ、彼等は間接的に責めていく。ネットが発達した今日(こんにち)、どのような場所にいても好き勝手に自分が心の中で抱く感情を出すことができる。

 人間、面と向かって何かを言う時より、何かに隠れて言葉を出す時の方が言葉に鋭さが加わる。

 平気で相手を傷付け、嘲笑う。また罪悪感を持たないのか、次々と言葉を生み出していく。

 所詮、気付かれない。

 その感情が気持ちを大きくしているのか、今も汚い言葉が飛び交っている。まるで、日常の一部のように。

「諌めないの?」

「何故ですか?」

「何故って……」

「無理ですよ」

 その場所に乗り込んで「止めよう」と言ったところで、聞き耳を持ってくれる者はいないだろう。逆に「偽善者」と呼ばれ、吊し上げを食らってしまう。誰も好き好んで、それに身を置くことはしない。それなら言いたいように言わせて、独特の世界の中で生きればいいと思っていた。
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