エターナル・フロンティア~前編~
再び溜息を付くと、ソラは車を発進させる。予定では「一日、車を借りる」という約束であったが、長時間のレンタルは後々煩い思いをするので借主のもとへ返しに行くことにした。何より時間の経過と共に見返りが大きくなっていき、下手すれば反せない物になってしまう。
その時、携帯電話が鳴った。一体誰からの電話だろうと着信相手を確認すると、表示された名前は噂の相手。ソラは一瞬出るのを止めようと思ってしまうが、仕方なく電話に出ることにした。
「何の用だ」
ソラは、不機嫌な声音で電話に出る。すると何を思ったのか、相手は大笑いしだす。その声にソラは更に不機嫌な声を続けると、今度は噴出すように笑う。何をここまで面白いのか――そのことを怒鳴りつけるが、一向に意味を話してくれない。結果、ソラは切れてしまう。
「笑うな!」
『邪魔だったか?』
「何だよ、それ?」
『デート』
「切るぞ」
『そんなに怒るなよ。冗談だって』
そのように言うも日頃からこのように冗談を言ってくる相手なので、果たしてこの言葉を信用していいものか迷いが生じる。それを確かめるかのようにソラは沈黙を続けていると、急に相手側から謝りだす。どうやら無言の圧力に負けたらしく、冗談も嘘だったようだ。
「ただの迎えだよ」
『幼馴染だろ? 確か、イリアちゃん』
「女性の名前を覚えるのは、相変わらず早いな。一度しか、会っていないというのに。その記憶力は、素晴らしいよ」
『可愛い女の子は、全て覚えようと思っている。ほら、今の職業って、可愛い子少ないじゃないか』
「だから、片っ端から声を掛けているんだ」
『それが礼儀だ』
「全く、お前らしいな。だからといって、片っ端から声を掛けて見事にフラれているじゃないか」
痛い部分を突かれたのだろう、相手からの返事がなかなか返ってこない。言葉では「可愛い」と言っているが、自分の好みに合った女性に出会うと、たとえ失敗がわかっていようが声を掛ける。その逞しさは尊敬に値するが、聊か礼儀に掛けているというのがソラの本音。