エターナル・フロンティア~前編~

 尊敬の対象として見る分には、何ら問題はない。人間、目標があった方が成長し易いからだ。

 長い物に巻かれろ。

 それとも、目上に媚びる。

 多少、それを行ってもいい。

 長い人生。余程自分に自信があり、高い実力を持っていなければ、独自路線を突っ走ることができない。

 しかし、あからさまにコロコロと心理を変えていくのは問題だ。科学者は、ひとつの物事を研究し解明していく職業。右へ左へと流れて安定しなければ、いい結果を出すことができない。

 一見、人物の心理状態と実験と研究は当て嵌まらないものだと思われがちだが、それは違う。他の分野の科学者は、ひとつの物に対して何十年も時間を掛け研究と実験を行なっている。

 結果、歴史に名前を残す人物が多数存在する。要は、ひとつのことに集中する能力が高かったのだ。

 熱い視線を送る者達は、果たして――

 しかしレナは、心の中で「関係ない」と、思う。実力でいえば、ユアンに勝てないのだから。

 建物の外に出ると同時に、無意識に天を仰ぐ。今日の青空は、いつもの青空と何処か違う。深い青は全てを吸い込みそうで、其処に浮く白い雲は独特の形を作り出し、印象付ける。

 同じ青空なのに、何かが違う。

 ふと、レナは溜息を付く。

 受けた体験で、ここまで違うものか。

 二回目の溜息が出る。

 清々しい青空の他に、今日は気温がちょうどいい。だというのに、晴れ晴れとした心はなかった。

(どうすれば……)

 三回目の溜息の中には、動揺が混じる。しかし、ソラの幼馴染のイリアに出会ったことは大きい。これで長年心の中に引っ掛かっていた物が、取り除かれるかもしれないのだから。

 でも、良かったとは言わない。

 本当の意味で「良かった」と言えることができるのは、ソラに許してもらった時。しかし、彼に許してもらえる立場でもない。面と向かって罵倒されるかもしれないが、覚悟はできている。いや、いい方に考えれば罵倒されるだけいい。本当に嫌われているのなら、口も利かない。
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