エターナル・フロンティア~前編~
果たして――
神を信じているわけではないが、無意識に祈りを捧げてしまう。それだけ、今回の事は精神への負担が大きい。
そして、ソラからの連絡を待つ。
◇◆◇◆◇◆
その夜、イリアはソラへ連絡した。
最初は「レナ・コーネリアス」の名前を出すことはしない。ただ、他愛の無い話を続ける。
しかし、長々と他愛の無い会話を繰り返すわけにもいかない。イリアは意を決し、彼女の名前を出した。
「ねえ、ソラ」
『何』
「あのね……知っている?」
肝心の部分は、小声で聞き取ることができない。ソラはそのことを伝えると、もう一度言って欲しいと頼む。
「えーっと、レナ・コーネリアスって方、知っている?」
勿論、ソラはその名前を知っている。その影響か、彼女の名前を聞いた瞬間、ソラは絶句していた。
彼にしてみれば、どういう経緯でイリアが彼女の名前を知ったのか……その点に不安感を抱いたのか、逆にソラが質問する。
「研究所で、会ったの」
『そう……なんだ』
「私、驚いたの。ソラの知り合いに、お婆さんがいたなんて。それも、凄く有名な方で……」
『今は、引退しているよ』
ソラにしてみれば、彼女が研究所に来る自体有り得ないと思っていた。レナは、悠々自適の隠居生活を送っている。今更、どのような理由を持って、研究所に訪れたのかわからなかった。
しかし彼女の性格を思うと「見学」という理由で、片付けていいものではない。必ず裏が存在すると考えるのが正しい。
と言って、イリアに尋ねるのは間違っている。イリアは、何も知らない。それに、嘘も言っていない。ソラは深い溜息を付いた後、電話を掛けてきた理由とレナがどのように関係しているのか尋ねる。彼は、何となくだがわかっていたのだ。この電話には、特別な意味が隠されていると。