エターナル・フロンティア~前編~

「お前にとっての礼儀だろ?」

『どっちだって、構わないさ。ところで、こんなことで電話をしたんじゃない。頼みごとがある』

「できることなら」

 友人の頼みごとというのは「調子が悪くなってしまったパソコンを直してほしい」というもの。ソラはコンピューター関係にとても詳しく、その気になればハッキングさえも可能のスキルを持つ。その為、友人をはじめ同僚からこのような頼みごとをされることが多い。

「またかよ」

『相性が悪くて、よく壊れる』

「全く……乱暴に扱うからだ。精密機械は、デリケートなんだよ。本格的に壊れたら、どうするんだ」

『心はデリケート』

「冗談は、ほどほどのして欲しいな。で、切るぞ。車を返しにいくついでに、パソコンを見る」

 それだけ言い残すと、相手からの返事を待たずに一方的に電話を切ってしまう。ソラは今まで使用していた携帯電話を助手席に乱暴に投げると車を発進させ、イリアの自宅の前を通らずに帰る。

 別に顔を見られる心配はないだろうが“もしも”という場合が考えられるので、油断できない。それにイリアは気付いていなかったが、自宅の明かりが点いていた。彼女の話では「今、自宅には誰もいない」と言っていたが、到着前に両親のどちらかが帰ってきたのだろう。

 タイミングがいいのか悪いのか――どちらにせよ、彼女の両親に会いたいと思わない。無論、相手も自分に会いたいとは思っていない。両者の仲は最悪そのものといってよく、嫌われているのなら長居は無用だ。ソラは車のスピードを上げると、急いで友人もとへ向かった。


◇◆◇◆◇◆


 イリアが自宅に立ち入ったと同時に驚いたことは、両親が帰宅していたことであった。イリアは気まずい表情を作りながら慌てて決まり文句となっている言葉を言うと、急いで二階へ向かう。

 荷物をベッドの上に置くと、イリアが帰って来たことに気付いた父親がやってくるが部屋の中へは入れない。ドア越しに、父親が話し掛けてくる。内容は「何故、電話をしなかったのか」ということであった。それは言われて仕方がないことであったが、イリアは心が痛む。
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