エターナル・フロンティア~前編~
誰かを愛していいのか――と。
唐突の質問に、レナは回答を躊躇う。
しかし、ソラの言いたいことは痛いほど伝わってくる。ソラは幼少の頃から、何処か感情を封じている部分が目立っていた。その彼が、誰かを愛していいのか、真剣に尋ねてくる。
レナは、スーッと息を吐く。
そして、静かに頷いた。
「感情のままに……」
囁く声音であったが、ソラの耳に確かに届いた。
刹那、熱い物が頬を伝う。
視界がぼやけ、鼻が熱い。また嗚咽が漏れ、身体が小刻みに震える。ソラは項垂れると一言「はい」と、返事を返した。
弱弱しいソラの姿にレナはそっと抱き寄せると、優しく髪を撫で泣き止むようにと言っていく。
「……はい」
「それとも、無理?」
「はい」
「そう」
先程ソラと対峙した時、何処か「強さ」を感じ取ったが、これがソラの本当の部分なのだろう。
表面上人間は、偽りの鎧を纏い仮面を被る。だがそれを剥ぎ取ると、弱い部分が曝け出される。特にソラの場合、普通の人間より弱い面が強い。その為、微かな切っ掛けで崩れる。
「これで、拭きなさい」
「……はい」
「ほら、きちんと拭きなさい」
「じ、自分でやります」
たどたどしい手付きに、見兼ねたレナが代わりにハンカチで涙を拭くと言うが、誰かに見られるのが恥ずかしいということで、ハンカチを受け取るとポンポンっと涙を拭いていく。
「有難う……ございます」
「いいのよ」
寧ろ、このように感情を素直に表してくれる方が、レナとしては有難い。変に感情を隠されると、互いの関係がギクシャクしてしまう。全てを曝け出すというのは難しいが、一部分を明かしてくれるだけでも、いい関係を築いていける。レナにとって特に、ソラにそのようにしてほしかった。