エターナル・フロンティア~前編~
「これにします」
「では、私はモーニングセットでいいわ」
レナも注文する料理を選び終えると、建物の中で仕事をしていたウエイトレスを呼び寄せる。そして二人の料理を注文すると、レナは予想外の言葉を言いソラを驚かせるのだった。
「それって……」
「いいかしら」
「いきなりなので、驚きました」
レナがソラに言った内容――それは、自分を「祖母」として見て欲しいというものだった。
勿論、これから先全部ではない。今日一日でいいので、自分のことを祖母として見て欲しいというのだ。
レナは結婚していないので、子供も孫もいない。身内は全員亡くなっているので、彼女は一人だ。
流石に若い頃は、独身でいいと思っていた。しかしこの年齢になると、結婚し子供を儲けておけばよかったと、後悔しているという。歳を取っての孤独ほど、切なくて哀しいものはない。だから、今日一日でいいから自分の孫になって欲しいと、ソラに頼んだのだった。
勿論、ソラは彼女の願いを聞き入れることにした。何より、断る理由はないからだ。それにソラも、祖母を持てることが嬉しかった。ソラは両親の顔を覚えているが、祖父母の顔は知らない。いや、そもそも生まれてから一度も、両親の祖父母に会ったことがないのだ。
内心、祖父母への憧れがないわけでもない。だからこそ、レナの願いを聞き入れたのだった。
「有難う」
「オレも嬉しいです」
「孫が誕生した記念に、プレゼントを贈るわ」
「プレゼントは、いいです」
「駄目よ」
「はい。コーネリアス博士」
次の瞬間、ソラは「しまった」という表情を作る。レナとの約束で、ソラは今日一日孫として振舞わないといけない。
忘れたというわけではないが、ついついいつもの癖でレナを「コーネリアス博士」と、呼んでしまう。ソラはペシペシっと自分の頬を叩くと、再度言い直すことにした。今度はきちんと、レナに対し「婆ちゃん」と。だが、何せはじめての経験なので、ソラはこそばゆかった。